ほろ苦クッキーの隠し味

「ねえ、クッキー焼いたんだけど食べる?」 「ん、ありがと。今度のは誰にあげる予定だったの?」 「三組の竹下君。リサーチ不足だった。彼女居るなんて聞いてないしっ」 がっくりと肩を落としている里穂を尻目に貰ったクッキーをぽりぽりと食べる。彼女の焼…

小さなお友達

「裏切った人を見返したいと言ったって、裏切った人はもう貴方のことを忘れているよ」 「原動力としてはいいかもしれないけど、達成出来ない目標なのだから、どこかで忘れるしかないんじゃないかな」 彼女は小さな手を開いたり閉じたりしながら、興味なさそ…

あえて名前をつけないこと

「感情に名前をつけるのはやめたの」 「どうして?」 私が聞き返すと、彼女はゆっくりと瞬きをした後、宙に浮く言葉を拾い集めて、文章を組み立てる作業を始めた。 「映画を観て感動したとして、その感動は人によって違うでしょ? 登場人物に感情移入したの…